フルリモートで地方移住はできる?会社員の2段階移住体験談

働き方・事業

「フルリモートになったし、いっそ地方に移住したい」。そう思いつつ、転職せずに本当にできるのか、後悔しないのか、なかなか踏み切れない方は多いはずです。

結論から言うと、フルリモートの会社員でも地方移住はできます。私自身、正社員のまま2021年に東京から大分市へ、2024年に日田市へと2段階で移住しました。

この記事では、移住メディアの一般論ではなく、実際にやった当事者の視点で「できる条件」「本当のメリット・デメリット」「後悔しない進め方」を正直にお伝えします。

結論|フルリモート会社員の地方移住は「できる」。ただし条件がある

東京から地方へ移り住む会社員のイメージ

フルリモートの会社員が地方移住を実現できるかどうかは、ほぼ1点に集約されます。それは「勤務先の制度が居住地の自由を認めているか」です。

理由はシンプルで、給与の源泉である仕事を維持したまま住む場所だけを変えるのが、この移住の本質だからです。転職や独立を伴わないぶん収入リスクは小さい一方、会社の勤務地ルールという前提が崩れると成立しません。

私の場合は、コロナ禍で業務が全面的にフルリモート化し、あわせて会社の制度上も大分県が居住可能なエリアになりました。この2つがそろったことで、転職せずに移住という選択肢が現実になったのです。

逆に言えば、この前提が整っていない段階で物件を探し始めるのは順番が逆です。まず自分の会社の制度を確認する。そこがすべてのスタートラインになります。

私がフルリモートで地方移住するまで(体験)

2段階で移住した経路をたどる地図のイメージ

私は一度で田舎に飛び込んだわけではありません。東京から大分市、大分市から日田市へと、段階を踏んで今の暮らしにたどり着きました。

きっかけ|コロナ禍のフルリモート化と会社制度

出発点は、コロナ禍で働き方が一変したことでした。出社前提だった仕事がフルリモートに切り替わり、同時に会社の制度でも地方居住が認められるようになりました。

「東京に住み続ける理由は何だろう」。満員電車と高い家賃に疑問を感じていた私にとって、この変化は暮らしを見直す大きなきっかけになりました。

私の場合、まず社内通達で大分県が移住可能エリアに含まれたことを知りました。興味を持って制度を詳しく調べたところ、自分も使えると分かったのが最初のきっかけです。当時の業務内容も場所を問わずに進めやすいものだったため、移住後の調整がつきやすかったことも幸いしました。上司には、社内で正式に認められた制度であることを伝えて相談し、業務上の不都合がないことを説明しただけで、問題なく理解してもらえました。会社のルールにのっとって手続きを踏むことが、気持ちよく移住するための一番の近道だと感じています。

2021年・東京→大分市(まず地方都市を選んだ理由)

最初の移住先に選んだのは、いきなりの田舎ではなく大分市という「地方都市」でした。品川区の旗の台から、2021年8月に移り住みました。

地方都市を選んだ理由は、暮らしの利便性を落とさずに移住のハードルを下げたかったからです。買い物や病院、交通の便がある程度そろった街なら、東京での生活水準から大きく落ちません。

実際、大分市の街の利便性は東京の主要駅エリアと比べても遜色なく感じました。移住の第一歩としては、この選択は正解だったと思っています。

2024年・大分市→日田市(より自分の暮らしへ)

大分市で3年ほど暮らしたあと、2024年11月に日田市の空き家バンクで見つけた古民家へ移りました。

この移住は、利便性よりも「これからどう生きたいか」を優先した選択でした。会社員を続けながら、農業や不動産、民泊といった小さな事業を育てる暮らしを本格的に設計し始めた時期です。

決め手になったのは、日田で出会った若手農家のコミュニティでした。同世代で自分の手で暮らしをつくる人たちとの出会いが、この土地で頑張ってみたいと思う後押しになりました。

フルリモート地方移住のメリット4つ

広い住まいと自然のある暮らしのイメージ

実際に移住して感じたメリットを、体感の大きかった順に紹介します。数字も交えて具体的にお伝えします。

同じ家賃で住まいが広がる(1DK→2LDK→9DKの実例)

最もわかりやすかったのが住環境の変化です。まず、東京→大分市中心部への移住は、東京時代とほぼ同じ家賃で、1DK(アパート)から2LDK(マンション)へと住まいが広がりました。

その後、大分市から日田市への移住では、家賃がさらに半分ほどになったうえで、2LDK(マンション)から9DK(古民家)へと広がりました。ただし空間が広がった分、古民家ならではの手入れの苦労もあります。住まいの好みによっては一長一短だと感じる方もいるかもしれません。

ともあれ、在宅ワークでは、生活空間と仕事空間を分けられるかどうかが日々の快適さを左右します。部屋数に余裕ができたことで、仕事とプライベートの切り替えが格段にしやすくなりました。

通勤ストレスと満員電車からの解放

フルリモートそのものの恩恵ですが、移住によってその価値をさらに実感しました。満員電車に乗る生活が完全になくなったのです。

通勤に使っていた時間と体力を、家族との時間や事業の準備に回せるようになりました。この余白が、後述する「事業を育てる暮らし」の土台になっています。

給与水準を保ったまま生活コストが下がる

転職を伴わない移住なので、給与水準は都市部のまま維持できます。一方で家賃をはじめとする生活コストは下がりました。

家賃の変化がいちばん分かりやすい例です。東京から大分市へは、先述のとおり同じ家賃で広さがほぼ倍になりました。大分市から日田市の古民家へは、家賃がさらに半分以下になったうえで、広さは何倍にもなっています(古民家との比較はさすがに有利すぎるかもしれませんが)。

食費は、周辺の飲食店の数自体が減ったことと、フルリモートで家中心の生活になったことが重なり、外食が減って自炊が増えました。その分だけ支出は下がっています。ただし「地方だから何でも安い」わけではなく、東京とあまり変わらない価格の店もあります。それでも、安くておいしい地元の店を見つけたときの満足感は格別です。

交通費は、電車代が車の維持費に置き換わった形です。私の場合、移動はどこも車で5〜15分程度、週末の遠出でも月に1〜2回ガソリンを入れるくらいの頻度です。支出全体で見ると、やはり家賃の差がいちばん大きく効いています。

自然と時間の余白/事業を育てる余裕

移住で得たいちばん大きなものは、時間と気持ちの余白かもしれません。今は古民家の庭で家庭菜園をし、季節の野菜やイチジク、ぶどうを育てています。この暮らしについては半農半Xとは?会社員向け始め方4ステップで詳しく紹介しています。

会社員を続けながら、不動産を3棟運営し、民泊も準備中です。都会の暮らしのままでは踏み出しにくかったこうした挑戦が、地方の余白の中で少しずつ形になっています。

正直に言うデメリット・後悔したこと

交通の便や車社会のリアルを示すイメージ

良いことばかりではありません。移住を検討するなら、事前に織り込んでおきたい弱点も正直にお伝えします。

空港・他県へのアクセスが不便になった(実体験)

私が大分市で最も物足りなさを感じたのが、空港や他県へのアクセスでした。東京にいた頃と比べ、旅行や遠出の自由度は明らかに下がりました。

これは大分という土地が悪いのではなく、東京の交通利便性が突出して高かっただけの話です。ただ、旅行好きの人ほどこの変化は事前に確認しておくべきだと感じます。

車社会・買い物・孤独感などのリアル

地方では車がほぼ必須です。維持費もかかりますし、運転が前提の生活に慣れる必要があります。

また、フルリモートと地方暮らしが重なると、意識しないと人との接点が減りがちです。私の場合は地域のコミュニティに関わることで解消できましたが、孤独感は多くの移住者が直面する課題です。

会社の出社回帰(RTO)リスクは織り込むべき

見落としがちなのが、会社の方針転換リスクです。フルリモートを前提に移住した後、会社が出社回帰に舵を切る可能性はゼロではありません。

こればかりは個人でコントロールできない部分です。だからこそ、移住は「制度が続く前提」だけに寄りかからず、自分の暮らしや収入源を少しずつ多様化しておく視点が大切だと考えています。

失敗しないための成功のコツ

移住の準備を進める人のイメージ

ここまでの体験を踏まえ、これから移住する方に向けた実践的なポイントを4つに整理します。

まず会社の制度・許可を確認する(相談の実際)

繰り返しになりますが、順番として最優先すべきは会社の制度確認です。居住地の自由が認められているか、申請は必要かを先に押さえます。

物件探しや理想の暮らしを描くのは、その前提が整ってからでも遅くありません。土台の確認を飛ばすと、計画そのものが崩れかねません。

いきなり田舎より「地方都市から」段階移住のすすめ

私が実感を持っておすすめしたいのが、段階移住という考え方です。最初から山あいの田舎を目指すのではなく、まず地方都市に住んでみる方法です。

地方都市なら利便性を保ったまま、その土地の気候や生活リズムに体を慣らせます。私自身、大分市を経由したことで、日田への移住をより納得して選べました。

ネット回線・ワークスペースを事前チェック

フルリモートの生命線はネット環境です。特に古民家や郊外の物件では、回線の速度や安定性を契約前に確認しておくと安心です。

私の場合、実はここで一度つまずいています。移住前に確認したところ、古民家のエリアには光回線が各社とも引けませんでした。ホームルーターも試しましたが電波が弱く、オンライン会議に耐えられる速度が出ませんでした。結局クーリングオフで解約しています。

最終的にたどり着いたのが衛星インターネット(スターリンク)でした。速度面は不安もありましたが、マンション時代の光回線と遜色ないスピードが出ています。夫婦そろって毎日フルリモートで働いていても問題はありません。

構成としては、家の外にアンテナを設置し、宅内に配線して専用ルーターでWi-Fiにしています。対応できる中継ルーターを足せば、家全体に電波を届けるメッシュ構成も可能です。ただしアンテナ設置は、対応実績のある業者でないと請け負ってもらえないことがあります。契約前に、施工業者を確保できるか確認しておくと安心です。

自治体の移住支援制度を調べる

移住先の自治体が用意する支援制度も忘れずに確認しましょう。金額の大きい制度もあります。

日田市にも、東京圏からの移住者を対象にした移住支援金の制度があります。金額や対象要件は年度ごとに見直されるため、本記事では詳細な数字を挙げません。日田市の移住支援金の公式ページで最新の条件を確認してください。

まとめ|移住は目的でなく“暮らしと働き方の再設計”

再設計された暮らしと働き方のイメージ

フルリモート会社員の地方移住について、体験をもとにお伝えしてきました。要点は次の3つです。

  • 実現の大前提は会社の制度確認。物件探しより先に行う
  • いきなり田舎より、まず地方都市への段階移住が失敗しにくい
  • 交通の不便さやRTOリスクは事前に織り込み、暮らしを多様化しておく

移住はゴールではなく、暮らしと働き方を自分の手で組み直すためのスタートです。私も日田で、会社員を続けながら少しずつ事業を育てる日々を送っています。

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