「移住したいけれど、いきなり家を買うのは怖い。まずは賃貸で試したい」。そう考えて物件を探すと、決まって出てくるのが「空き家バンク」という言葉です。無料や格安で家が借りられるらしいけれど、実態がよく分からない。そんな不安を持つ方は多いと思います。
結論から言うと、空き家バンクは「まず賃貸で移住を試したい人」に向いた仕組みです。私自身、2024年11月に大分県日田市の空き家バンクを使い、古民家を賃貸で借りて移住しました。
この記事では、空き家バンクの仕組み・メリット・デメリット・使い方を制度として整理しつつ、実際に借りた当事者として感じたことを各章に差し込んでいきます。一般的な解説だけでは分からない「借りた人のリアル」まで持ち帰ってください。
空き家バンクとは(仕組みをやさしく整理)

空き家バンクとは、自治体が運営する「家を貸したい人・売りたい人」と「借りたい人・買いたい人」をつなぐマッチングの仕組みです。まずはこの前提を押さえておくと、あとの話が理解しやすくなります。
私も日田市の空き家バンクで古民家を見つけ、賃貸で借りました。民間のポータルサイトを毎日見ていましたが、たどり着いたのは自治体のサイトでした。
自治体が運営する「貸したい人×借りたい人」の掲示板
空き家バンクは、各自治体が公式サイト上で空き家情報を公開する掲示板のようなものです。運営が自治体なので、営利目的の広告色が薄く、地域に眠っている物件が載りやすいのが特徴です。
掲載されるのは、市場の不動産流通には乗りにくい家が中心です。持ち主が「知らない業者に任せるより、移住してくれる人に使ってほしい」と考えて登録するケースも少なくありません。
掲載は原則無料。ただし契約は民間業者が仲介する
空き家バンクへの物件掲載は、多くの自治体で原則無料です。ここが「無料で家が手に入る」と誤解されやすいポイントですが、無料なのはあくまで「情報の掲載」です。
実際の売買・賃貸契約は、民間の不動産業者が仲介に入る自治体が多く、その場合は仲介手数料が発生します。自治体はあくまでマッチングの入り口であり、契約の当事者ではない、と理解しておくと安全です。
空き家バンクのメリット4つ

空き家バンクの最大の価値は、市場に出回らない物件と出会えることと、自治体の支援を受けられる可能性があることです。理由は、運営が営利業者ではなく自治体だからです。順に見ていきます。
市場に出回らない古民家・格安物件に出会える
一つ目のメリットは、民間ポータルには載らない家に出会えることです。私が借りた古民家も、大手のポータルサイトをどれだけ探しても出てきませんでした。空き家バンクで初めて存在を知った物件です。
持ち主が地域とのつながりを重視していたり、広く売り出すつもりがなかったりする家は、こうした自治体の仕組みにしか現れません。「掘り出し物」に近い出会いがあるのは、賃貸ポータルにはない魅力です。
自治体の補助金・改修助成を使える場合がある
二つ目は、移住や改修に対する補助制度を使える可能性があることです。金額や条件は自治体ごとに大きく異なるため、お住まい予定の自治体で忘れずに確認してください。
参考までに、私が利用した日田市には空き家バンク経由の移住者向けの改修費補助・購入費補助・家財処分補助などの制度があり、大分県にも県外からの移住者向けの移住支援金があります。ただし金額や対象要件は年度ごとに見直されるため、本記事では詳しい数字は挙げません。日田市建築住宅課の空き家バンクページとおおいた暮らしの第一歩(移住支援金)で、最新の条件を確認してください。
費用をかけず気軽に探し始められる
三つ目は、探すこと自体にお金がかからない点です。自治体サイトを見て回るのは無料で、登録も基本的に無料です。移住を「検討する」段階でコストが発生しないのは、心理的なハードルを大きく下げてくれます。
賃貸物件も見つかり「まず試す」ができる
四つ目は、売買だけでなく賃貸の物件も見つかることです。空き家バンクは「買う」印象が強いのですが、賃貸で貸し出す物件も掲載されています。
私はこの賃貸物件を使い、日田での暮らしを「まず試す」ことができました。現在は日田市内で新居の計画が進行中で、完成後に移る予定です。いきなり家を買わず、賃貸で地域との相性を確かめられたのは大きな安心でした。
空き家バンクのデメリット・注意点(借りる前に知っておきたい)

一方で、空き家バンクには相応のデメリットもあります。結論を言えば「情報が少なく、家の状態や条件は自分で見極める必要がある」という点に尽きます。ここを甘く見ると、入居後に苦労します。
現状有姿が基本。修繕・DIY費用は入居者負担になりがち
最大の注意点は、多くの物件が「現状有姿」で引き渡される点です。現状有姿とは、今ある状態のまま貸し借りするという意味で、貸主が修繕してくれるとは限りません。
古い家ほど、水回りや畳、建具などに手を入れる必要が出てきます。その費用を入居者が負担するケースは珍しくありません。家賃の安さだけでなく、入居後にかかる修繕費まで含めて考える必要があります。
ただし、状態は物件によって大きく変わります。私が借りた古民家は築100年以上ですが、内見の時点で内装がよく整っていました。お風呂やトイレは改装済みで、それまで見てきた「ただ古いだけ」の物件とは明らかに違ったのです。入居日に多少の掃除は必要でしたが、住み始めること自体に支障はありませんでした。とはいえこれは運が良かった例です。現状有姿が基本である以上、内見で状態を見極める姿勢は欠かせません。
情報が少なく更新が遅い。自治体はマッチングまで
二つ目は、掲載情報が少なく、更新が遅い傾向がある点です。写真が数枚しかない、間取りの記載が簡素、といったことはよくあります。民間ポータルの充実した情報に慣れていると、物足りなく感じるはずです。
また、自治体が担うのはあくまでマッチングまでです。物件の細かい状態や条件は、自分で問い合わせて確かめる姿勢が欠かせません。
直接交渉になりやすくトラブルの種がある
三つ目は、持ち主との距離が近く、直接交渉の色が濃くなりやすい点です。設備の不具合、家の傷み、土地の境界など、事前に確認しておかないと後々もめる要素があります。
不安な場合は、仲介する不動産業者や自治体の窓口を挟んで、口約束ではなく書面で条件を残すことをおすすめします。
空き家バンクの使い方(登録〜契約までの流れ)

使い方はシンプルで、大きく「探す→問い合わせ・内見→交渉・契約」の3ステップです。私が日田で家を借りたときも、この流れをたどりました。
ステップ1:自治体サイトで物件を探す
まずは移住したい自治体の名前と「空き家バンク」で検索し、物件一覧を見ます。気になる家があれば、物件番号や所在地、賃貸か売買かをメモしておきましょう。
複数の自治体を横断して探せる、国や民間が運営する空き家バンクのポータルサイトもあります。エリアを絞り込めていない段階では、そうした横断検索から入るのも効率的です。
ステップ2:窓口へ問い合わせ・内見する
気になる物件が見つかったら、自治体の担当窓口や指定の不動産業者へ問い合わせます。多くの場合、利用者登録をしたうえで内見の予約に進みます。
内見では、写真では分からない部分を自分の目でしっかり確かめてください。日当たり、水回りの状態、床や壁の傷み、においなど、住んでから効いてくる要素はその場でチェックします。
私の場合は、日田市で空き家バンクの仲介を担う移住支援会社が窓口になってくれました。最初に問い合わせたのは7月下旬で、そのときは今の古民家はまだ出ておらず、いくつかの賃貸・売買物件を案内してもらいました。ピンとくる家がないまま過ごしていた8月、担当の方から「いいのが出てきたばい」と連絡が入ったのが、今の古民家です。実はこの家、僅差でもう一組が申し込む寸前で、私は2番手だったそうです。それでも、私が「ぜひここに住みたい」と強く伝えていたことが1番手の方にも共有され、譲っていただけたと後から聞きました。そこから大家さんを紹介してもらい、9月下旬から10月にかけて契約、11月末に引っ越しを終えました。問い合わせからおよそ4か月です。地域に根ざした窓口だからこその、人の温度が伝わるやりとりでした。
ステップ3:交渉・契約する(賃貸/購入)
条件に納得できたら、賃貸なら賃貸借契約、購入なら売買契約に進みます。賃貸の場合でも、修繕の負担範囲や設備の扱いを事前にすり合わせておくと安心です。
補助金を使う予定があるなら、契約前に自治体へ相談するのが鉄則です。契約後では補助対象外になる制度もあるため、順番を間違えないようにしてください。
賃貸で借りる人が失敗しないためのチェックポイント

賃貸で借りる人が失敗しないコツは、家賃の安さに飛びつかず「総額」で判断することです。理由は、古い家ほど家賃以外のコストが後から効いてくるからです。
格安・無料物件ほど状態を疑う
家賃が極端に安い物件は、その分どこかに理由があると考えたほうが健全です。断熱がほとんど効いていない、水回りが古い、雨漏りの跡がある、といった点は特に注意して見ます。
疑うといっても後ろ向きな意味ではなく、「安い理由を正しく把握して納得して借りる」ということです。理由が分かっていれば、対策も予算立てもできます。
総額(家賃+修繕+光熱費)で判断する
判断の軸は、家賃だけでなく「家賃+修繕費+光熱費」の総額です。古民家は天井が高く隙間も多いため、冷暖房の効きは新しい家と同じにはいきません。
私自身、住んでみて最初に驚いたのが、内見では気づけない細かな隙間の多さでした。冬は寒く夏は暑い、断熱という発想がそもそもない構造です。その隙間から虫もよく入ってきて、夏は大小の虫を一匹も見ない日がないほどでした。大の虫嫌いの妻は、最初のうち慣れずに、ついてきたことをしばらく後悔していたほどです。部屋が広いぶん掃除の手間もあり、段差の多い間取りではマンション時代に活躍したロボット掃除機が使えない部屋もありました。マンションが現代の暮らしに合わせて効率化された家だとすれば、古民家は効率を度外視したロマン重視の家です。その違いを、良くも悪くも日々味わっています。
こうした「暮らして初めて分かること」まで見込んでおくと、入居後のギャップが小さくなります。だからこそ私は、いきなり買わずに賃貸で試す道を選びました。
まとめ|空き家バンクは「まず賃貸で試したい移住者」に向く

空き家バンクは、移住を賃貸から始めたい人にとって心強い選択肢です。最後に要点を3つに絞ります。
- 空き家バンクは自治体が運営するマッチングの仕組み。掲載は原則無料だが、契約は民間業者が仲介し手数料は発生する
- メリットは市場に出ない物件との出会いと補助制度。デメリットは情報の少なさと現状有姿での負担。総額で判断するのが失敗しないコツ
- いきなり買わず賃貸で「地域との相性」を試せるのが最大の価値。私も賃貸で試したうえで、新築へ進む判断ができた
移住は、家を決めた瞬間に完結するものではなく、そこから暮らしが始まります。まずは賃貸で試し、その土地が自分に合うかを確かめる。そのための入り口として、空き家バンクは十分に使える仕組みだと感じています。


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