古民家に住んでみたい、と考えている方は多いと思います。ただ、夏はどのくらい暑いのか、冬はどのくらい寒いのか、光熱費はどこまで上がるのか。そこが見えないまま契約に踏み切るのは、やはり怖いものです。
結論から書くと、断熱のない古民家は夏は暑く、冬は寒いです。「古民家は夏涼しい」という話をよく見かけますが、少なくとも我が家では日中のエアコンは欠かせません。光熱費もマンション時代と比べて体感で3〜5割は増えました。
この記事は、2024年11月に大分県日田市の明治築・9DKの古民家へ移り住んだ立場から書きます。夏と冬の体感、光熱費の実際、そして今やっている対策を正直にまとめました。これから古民家を借りようとしている方、すでに住み始めて暑さ寒さと格闘している方の判断材料になればうれしいです。
「古民家は夏涼しい」は、我が家には当てはまりませんでした

まず前提として、我が家がどんな家かを書いておきます。明治築で築100年超、間取りは9DK、和室と洋室が混ざった増改築だらけの木造家屋です。空き家バンクで見つけて、大家さんと直接契約で借りました。
内装は風呂とトイレを中心に改装済みで、内見の時点では「ただ古いだけの家」という印象はまったくありませんでした。住み始めてから効いてきたのが、内見では気づけない部分です。
涼しいのは伝統的な設計の古民家の話
「古民家は夏涼しい」という説自体は、間違いではないのだと思います。深い軒で日射を遮り、土間で床の温度を下げ、家じゅうを風が抜けるように作られた家であれば、たしかに夏の日中でも空気は動きます。
ただ、我が家のように何度も増改築を重ねた改装古民家では、その前提がところどころ崩れています。軒の下にサッシの部屋が足されていたり、風の抜け道が壁で止まっていたり。実際に夏を越してみると、日中は素直にエアコンを入れるほうが早いという結論になりました。
断熱という発想がそもそもない構造
暑さも寒さも、原因は同じところにあります。壁にも天井にも断熱材がなく、窓は単板ガラス。加えて100年分の歪みで、サッシや建具のあちこちに細かい隙間があります。
私が家の中で一番強く感じたのは、「断熱という発想がない構造」という一点でした。夏は外の熱がそのまま入り、冬は暖めた空気がそのまま逃げていきます。夏と冬でまったく別の悩みに見えて、実は原因は同じというのが、断熱のない古民家の分かりやすいところだと思います。
古民家暮らし全体のメリット・デメリットは古民家の賃貸暮らし|住んで分かったメリット・デメリットにまとめています。借りるかどうかの総合判断はそちらに譲り、この記事は暑さ・寒さ・光熱費だけを深掘りします。
夏の古民家はどのくらい暑いか|一番きついのは二階

二階に熱がたまり、窓を開けても抜けません
夏で一番きついのは二階です。我が家は二階を夫婦の仕事場にしていて、平日の日中はほぼここで過ごしています(通信環境はスターリンクで整えました)。
屋根の熱がそのまま下りてくるうえ、暖まった空気は上に溜まります。窓を開けて風を通せば多少はましになるんですが、真夏の日中に窓から入ってくるのは涼しい風ではなく、単に熱い空気です。結局、日中のエアコンは必須という運用に落ち着きました。
外出時も就寝中も、エアコンはつけたままです
これは古民家に住んでから身についた習慣です。夏の外出時、エアコンを完全に止めていくことはしません。弱めにつけたまま出かけます。
電気代だけを見れば止めたほうが安いのは分かっているんですが、一度冷房を切って数時間空けると、二階は本当に手がつけられない状態になります。帰ってきて階段を上がった瞬間に地獄を見ることになり、そこから冷やし直すのに時間もかかります。だったら弱く回し続けたほうが、体力的にも精神的にも安いという判断です。
寝室も二階なので、夏は寝ているあいだもエアコンをつけたままです。深夜から明け方にかけては外の空気もかなり涼しくなるんですが、それでもエアコンなしだと寝汗をかいて寝苦しくなります。もっともこれは、九州の盆地という土地柄も大きいはずです。同じ古民家でも地域によって事情はかなり変わると思うので、あくまで我が家の場合として読んでもらえたらと思います。
救いは早朝の空気
暑い話ばかりになりましたが、夏の古民家に良さがないわけではありません。早朝の川沿いを歩く時間は、ここに来てから一番気に入っている習慣です。
日が高くなる前の空気はひんやりしていて、川面を渡ってくる風が気持ちいいです。日中に閉じこもる分、朝のうちに外の空気を吸っておくと一日の感覚が整います。日中の暑さと引き換えに得られるものとしては、悪くないと思っています。
冬の古民家はどのくらい寒いか|最高気温5度未満の日もある

日田市は盆地で、冬は冷え込みます。最高気温が5度に届かない日もあり、そういう日の古民家は、暖房を切った瞬間から部屋の温度が落ちていくのが分かります。
最初の冬は灯油ストーブだけで越しました
我が家が引っ越したのは2024年11月末で、いきなり冬本番でした。しかも入居してすぐ、居間のエアコンの暖房だけが効かないことに気づきました。
そこで最初の冬をどう乗り切ったかというと、灯油ストーブです。前に住んでいた方が置いていってくれたものがあり、それをそのまま使わせてもらいました。結果として、断熱のない古民家の冬を灯油ストーブひとつで越すことになります。今思えばなかなかのスタートだったんですが、おかげで「古民家の冬は暖房ひとつでは足りない」ということを、初年度に身をもって覚えました。
このエアコンが直ったのは、次の夏です。冷房のほうは動いていたので夏はしのげると思っていたんですが、2025年6月ごろから冷気が出ない日が増えてきました。さすがにこれはまずいと思って大家さんに相談したところ、新しいエアコンと工事業者さんを手配してくれました。7月には新品のエアコンで過ごせるようになり、直接契約で相談しやすい関係だったことが、こういう場面で効いてきたと感じています。
今はエアコン+灯油ストーブ+電気毛布
現在の冬の構成はこの3つです。
- 基本はエアコン暖房: 日中に長く過ごす部屋をエアコンで暖めます
- 特に寒い日は灯油ストーブを併用: エアコンだけでは追いつかない日に足します
- 寝室は電気毛布: 部屋の空気ではなく寝床そのものを暖めます
このうち、古民家に住んでいない方にも一番おすすめしたいのが電気毛布です。電気毛布は消費電力が小さく、エアコン暖房と比べると電気代を抑えやすいと言われています(具体的な差は機種や電力単価で変わります)。それでいて布団の中はしっかり暖まるので、寒い夜の満足度が高いです。部屋全体を暖めようとすると古民家は分が悪いんですが、寝床だけなら断熱の有無はほとんど関係ありません。
光熱費はマンション時代の体感3〜5割増

気になるお金の話です。電気料金も灯油の相場も年によって動くので、具体的な金額は出しません。体感としては、大分市のマンションに住んでいたころと比べて3〜5割増というのが正直なところです。
内訳としては、夏と冬に電気代が伸び、冬はそこに灯油代が乗ります。広い家を丸ごと快適にしようとすると、この増え方ではとても済まないはずです。使う部屋を絞ったうえでの3〜5割増だと思ってください。
一方で、我が家の場合は家賃が大分市のマンション時代の半分以下になっています。光熱費が数割増えても、住居費の総額では下がっている計算です。ここは物件ごとに条件が違うので一般化はできないんですが、「光熱費だけを見て古民家をあきらめる」のはもったいないと感じています。移住前後のお金の変化全体は大分移住の全記録でも触れています。
きついのは夏と冬の両方ですが、どちらか一つを挙げるなら夏です。エアコンをつけっぱなしにする必要性が、冬より高くなるからです。体感としては7月から9月いっぱいと、12月から2月いっぱいが、ほぼつけっぱなしの期間になります。
負担が大きいのは電気代です。エアコンが直ってからは基本的にエアコンでしのぐようになったので、そのぶん電気に寄っています。ただし灯油ストーブがメインだった時期は、灯油の減りが驚くほど早く、灯油代も相応にかさみました。暖房の方式を変えても、断熱がない家では結局どこかに跳ね返ってくる、というのが正直なところです。
断熱のない古民家で効いている4つの対策

断熱工事をせずに賃貸のままでしのぐ、という前提でやっていることを4つにまとめます。
1. 暮らす部屋を絞る
9DKの全部屋を暖冷房するという発想は、早い段階で捨てました。冬は日中に使う部屋と寝室だけを暖め、それ以外はふすまや建具で仕切って放っておきます。
部屋数が多いことは古民家の魅力なんですが、温熱環境の面では素直に負債です。「広い家に住む」ではなく「広い家の一部に住む」と考えると、途端に運用が楽になります。
2. 夏の外出時はエアコンを弱めにつけたまま
前述のとおりです。切って出かけて帰宅後に全力で冷やすより、弱く維持し続けるほうが体感としては快適で、立ち上げの負担も小さくなります。長時間家を空ける日は別として、数時間の外出ならこの運用にしています。
3. 冬の寝床は電気毛布に任せる
部屋の空気を暖めるのではなく、寝床だけを確実に暖める発想です。断熱のない家は寝ているあいだに室温が落ちますが、電気毛布があると布団の中の条件はほとんど変わりません。導入コストも低く、賃貸でも今日から試せます。
4. 隙間を物理的に塞ぐ
入居直後に、全サッシと窓の隙間を自分でチェックして、隙間テープとコーキングで塞げるところを塞ぎました。もともとは虫の侵入を減らすためのDIYだったんですが、結果的にすきま風対策としても効いています。
このあたりの作業は田舎暮らしの虫対策|古民家1年で分かったことで詳しく書いています。虫と寒さは、古民家では同じ原因から生まれている問題なので、対策もかなりの部分が共通します。
まとめ

明治築の古民家に住んで分かった温熱環境の実際を、3点にまとめます。
- 「古民家は夏涼しい」は改装古民家には当てはまりにくいです。 我が家は日中エアコンが必須で、特に二階に熱がたまります。夏は外出時も就寝中もつけたままにしています
- 冬は暖房ひとつでは足りません。 エアコンを基本に、寒い日は灯油ストーブ、寝室は電気毛布という組み合わせでしのいでいます。電気毛布は電気代を抑えやすく、古民家でなくてもおすすめです
- 光熱費はマンション時代の体感3〜5割増です。 ただし使う部屋を絞ることが前提で、家賃を含めた住居費の総額では下がっています
暑さと寒さは、古民家暮らしのなかでも事前に覚悟しておくべき部分だと思います。それでも、朝の空気や広い家の面白さと引き換えなら十分に釣り合う、というのが夏と冬をひと通り越した今の実感です。
- 借りるかどうかの総合判断は古民家の賃貸暮らし|住んで分かったメリット・デメリット
- 虫と隙間の話は田舎暮らしの虫対策|古民家1年で分かったこと
- 広い庭の使い方は古民家の広い庭で家庭菜園を始めた実録

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